第11章 倒したのお前やで
翌日は、朝から清々しいほどの快晴になった。
皆山道に慣れているとは言え露天風呂までは少し距離があるため、一行は朝早くに出発した。
道すがら、三人の嫁達が作ってくれた弁当などを食べたりして休憩を挟みながら、のんびりと道を行く。
真昼であることもあって、咲も鬼に襲われる心配も無くゆったりと森の緑を楽しんだのだった。
到着した露天風呂はかなり森の奥まったところにあり、確かに通常の人間ではあまり見つけられそうになかった。
まさに穴場と言うにふさわしい。
しかし、ひと気が無い割には綺麗に整備されている。
簡易的ではあるが脱衣所も設けられており、湯船の真ん中には男湯と女湯を分断するように柵が立っていた。
とはいえその垣根を超えるのはいとも容易そうなので、男湯・女湯の概念は両者の自制心に任せられているようなものであった。
きっと宇髄夫妻は、普段は他に客がいなければ仲良く一緒に入っているのだろう。
脱衣所で服を脱いだ咲達は、歓声を上げる須磨を先頭にして温泉へと飛び込んだ。
「あーっ!気持ちいいーっ!」
「山道で一汗かいた後に入るのは格別だねぇ」
「やっぱり温泉はいいわね~」
「はぁ~、極楽ですね」
咲は入浴前に義足を取り外しており、ピョンピョンと片足飛びで湯船までやって来ていた。