第2章 逢魔が時
「咲達を襲った鬼は、元は名も無いような雑魚鬼だった。それが、咲の足を食ったことで莫大な力を得てしまったのだ。もしかしたら、十二鬼月に匹敵するかもしれないほどの」
「え……?片足だけで……?」
思わずギョッとして炭治郎が聞き返した。
鬼が強くなるためには何十人、何百人もの人間を喰わなければならないはずだ。
それが、たったそれだけで……?
そう口に出してから炭治郎は、そういえば先ほど森の中で彼女を襲っていた鬼達が「ものすごいご馳走を見つけた」と言っていた事を思い出した。
それに、先ほどしのぶも「あなたは他の人とは違うのですから」と言っていた。
もしかして……という推測が炭治郎の頭に浮かぶ。
「彼女は稀血だ。それも、かなりの希少種」
杏寿郎の言葉が、炭治郎の疑問を即座に解消してくれた。
「片足で150人分、片腕で100人分、胴体で200人分、頭部で300人分の栄養があると見積もられている。つまり彼女には千人分の栄養があるということだ」
「……す、すごい……」
杏寿郎の説明を聞きながら、炭治郎はそれ以上言葉が出てこないほどに驚いた。
それは横にいる善逸と伊之助も同じようで、二人も炭治郎同様に絶句していた。