第11章 倒したのお前やで
(この二人はどうも真面目過ぎて、中々進展しねぇからなぁ。このままじゃ、歳ばかりいたずらに取っていっちまう。いや、歳を取れるのならまだ良いが、俺達は歳を取れなくなる可能性だってあるんだ。鬼殺隊というのは、いつ死んでもおかしくない、常に命の綱渡りをしているような仕事なんだから)
頬杖をついて視線を向けていた宇髄に対して、咲は嬉しそうに言った。
「先日、活動写真を一緒に見に行きました」
その笑顔に、宇髄は心の中で(おーおー、可愛い笑顔浮かべちまって)と自分まで嬉しくなる。
「へぇ、そいつぁいいな!二人で行ったのか?」
「いえ、炭治郎さんも一緒です。お館様から招待券をいただいたのです」
(あちゃ~)
咲の返答を聞き、宇髄は心の中で顔に手を当てた。
きっと想像するに、煉獄は咲と二人きりで出かけられなかったことに、あの太い眉を滑稽なくらいしょげさせて「よもや…」とか言ったに違いない。なんて不憫な奴だ。
「でもその前は、二人でお相撲を観に行きましたよ」
「へぇ!」
その時のことでも思い出しているのだろう。
ニコニコと嬉しそうに笑顔を浮かべながら語る咲を微笑ましく見つめながら、宇髄は今度は心の中でホッと息をついた。
(どうやらそれなりにちゃんとやってるらしいな)
二人が楽しげに相撲観戦をしている姿を思い浮かべて、宇髄はほっこりと心に春の光が差したような気持ちになるのだった。