第2章 逢魔が時
ぼんやりと霞みがかったような微笑を浮かべているその子は、炭治郎達の同期である栗花落カナヲと言って、女性でありながらも圧倒的な戦闘力を有し、蟲柱であるしのぶの継子となっている。
あまり感情を顕にしない子ではあるが、慣れた相手に対しては年頃の少女らしい可愛い笑顔を見せることもある。
「咲、つかまって」
そう言ってカナヲは咲の左肩の下から腕を回した。
右側はアオイが支える。
「ありがとう、カナヲちゃん」
そのままピョンピョンと跳ねながら歩いていく咲を支えながら、三人は部屋の外に出て行ったのだった。
そこで、ずっと黙っていた杏寿郎が口を開いた。
「猪頭少年!!」
突然の大声に、炭治郎と善逸はビクリと肩を揺らす。
いつもと同じくらいの声量のはずなのに、何か普段とは違う迫力があった。
それは伊之助も感じ取った様子で、くるっ、と素早く杏寿郎の顔を見上げた。