第2章 逢魔が時
だが、炭治郎の心配をよそに、伊之助の発言に対する咲の返答は、先ほどと同じように非常に淡々としたものだった。
「そう……かもしれませんね。伊之助さんの言う通り、私は山の中では生きていけないでしょう」
端正な顔立ちのせいでその冷静さがより一層際立っているように感じられる。
むしろ冷静であればあるほど、何か胸を締め付けられるような悲痛さを見る者に与えるのだった。
「でも、幸いなことに私は人間です。それに、確かに私は片足がありませんが、仕事は問題なくこなすことができています」
そう言ってから、スッ、と咲は四つん這いになり立ち上がろうとした。
それをアオイが慌てて横から支える。
「カナヲ!カナヲーッ!ちょっと手伝って!」
そう言ってアオイが部屋の外に声をかけると、今度は髪を片側で高く結い上げた少女が入ってきた。