第10章 産屋敷財閥に任せなさい
「咲は最近怪我とかしてない?今日はどうして蝶屋敷に?」
炭治郎が、まるで妹の禰豆子に向けるような柔らかい目をして聞く。
咲が給料や荷物の配達に来てくれる度に禰豆子と楽しそうに遊んでいる姿を見ていたので、すっかり、もう一人妹ができたような気持ちになっているのである。
「月に一度の香水を貰いに……」
それから、蝶屋敷の子達を活動写真に誘いに……、と言おうとしたが、この忙しさでは難しそうだと思い口が止まる。
どうしよう、せっかくお館様からいただいた券なのに、このままでは無駄になってしまう。
「咲?どうかした?」
炭治郎が心配そうにこちらを見ている。
その顔を見た時、咲はあることを思いついた。
「あの……炭治郎さん、突然ですが、活動写真を一緒に観に行きませんか?招待券を頂いたのです」
「えっ!いいの!?」
「はい、もし良かったらなんですけど……」
「やったぁ、行くよ!俺、活動写真って観たこと無いんだ!嬉しいなぁ」
炭治郎が本当に嬉しそうな顔をしてそう言ってくれたので、咲はホッとして嬉しくなる。
そこへ、他にも声をかけてきた人物がいた。
「咲!竈門少年!」
そのハツラツとした大きな声に二人が振り返ると、炎のように羽織をはためかせながら杏寿郎が廊下を歩いてくるところだった。
昨夜の任務には、杏寿郎も参加していたのだ。