第10章 産屋敷財閥に任せなさい
一通りの報告をし終えて、ふと会話が途切れた時、耀哉がふっと微笑んだ。
「ところで咲は、いくつになったかな?」
「はい、14になります」
「そうか……。年頃の娘らしい遊びもさせてやれずにごめんよ」
優しい微笑みの切れ間に、少し悲しそうな表情が浮かぶ。
「そんな、滅相もございませんお館様!私はむしろ、拾っていただいたご恩を感じているのです!」
「ありがとう咲。でもね、私は咲にはもっと息抜きをする時間を持ってもらいたいと思っているんだよ」
ニコニコと優しく微笑まれ、咲はその心地よさに、嬉しさのあまりモジモジとして俯く。
「だからね咲、我が産屋敷家が所有している劇場で活動写真でも見てくるといい。このチケットで何人でも入れるから、他の子どもたちも誘って行ってみてはどうだろう?」
そう言って耀哉は、凝った模様の印刷された美しい券を咲に手渡してくれたのだった。
産屋敷邸を出て、来た道をテクテクと戻りながら、咲は先ほど耀哉から渡された美しい券をまじまじと見下ろした。
とても綺麗な券だ。
少し厚手のしっかりとした紙に、まるで金糸で縫ったかのような立体的で繊細な模様が印刷してある。