第10章 産屋敷財閥に任せなさい
お館様との定期的な面談の日が、またやって来た。
産屋敷邸に参上した咲がいつものように座敷で待っていると、くいな に手を引かれた耀哉がやって来た。
春のひだまりのような笑顔が咲に向けられる。
「やぁ、咲、久しぶりだね」
「お館様におかれましても、ご壮健でなによりです」
腰を下ろした耀哉に、咲もいつも通り頭を下げて挨拶をした。
咲はこうして定期的に耀哉と面談をして、体調の変化や日頃の任務の状況などについて報告している。
それは彼女が類を見ない希少な稀血であり、鬼殺隊にとって重要な存在だからである。
ただ耀哉としては、そういう理由のみで面談をしているつもりもなかった。
片足を失いながらも隠として鬼殺に尽力している彼女に、何か少しでも力になってやりたいと思うからこそ、こうして膝を交えているのだ。
その日もいつも通り、最近の体調のことや、困っていることは無いかなどを訊ねられ、咲は日頃の任務の事などを思い出しつつ話をした。
耀哉の声には人の心を落ち着かせる不思議な力があり、いつまでも聞いていたいと思わせる。
咲は、心が穏やかになっていくこの時間がとても好きだった。