第8章 あなたの笑顔が見たいから
結局伊之助は、森の出口まで咲を送ってくれた。
伊之助が一緒にいてくれたおかげであの後は鬼に襲われることもなく、順調に森を抜けることができたのだった。
「じゃあな咲!!もう鬼に襲われんじゃねぇぞ!!困った時はこの伊之助様を呼べ!!」
「ありがとう親分!」
すっかり定着した親分呼びで伊之助に礼を言った咲は、再び伊黒邸に向かって歩きだしたのだった。
伊之助のおかげで、咲は日暮れ前には伊黒邸に到着することができた。
玄関で声をかける前に気配を察知したらしい伊黒が、いつものように首に鏑丸を巻きつけて出てきた。
「咲か。どうした、届け物か?」
「はい!こちらと、あと、蜜璃さんからです」
そう言って咲は、任務で運んできた小包と一緒に手渡す。
「甘露寺から……」
甘露寺の可愛らしい文字で表書きされた書簡と小箱を受け取ると、伊黒はそれを後生大事そうに胸に抱いた。
その姿に、咲の胸はホワと温かくなるのだった。