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【鬼滅の刃/煉獄】冬来たりなば春遠からじ

第8章  あなたの笑顔が見たいから



だが、単純だが今回のことでその印象は完全に払拭されてしまった。

仇の鬼の時もそうだし今だって、口調は乱暴だが、いつも咲のことを助けてくれる。

彼の言動をよくよく見てみれば、確かに無遠慮ではあるし口も悪いが、そこに悪意などは全く無く、まっすぐな心の持ち主だということが分かるのだ。

むしろその気持ちが強いからこそ、感情がほとばしってあのような言い方になってしまうのだろう。

それに、苦手な印象が消えた今だから分かるのだが、伊之助の言動はまるで小さな子どものそれで、とても可愛らしいのだ。

まるで、手のかかるやんちゃ坊主を相手にしているかのようだ。

咲はふと、仇の鬼と遭遇した時以来、仲良くなることのできた禰豆子との交流を思い出した。

禰豆子の着物の袂にはピカピカのどんぐりがいくつも入っていて、とても嬉しそうにそれを見せてくれた。

(その時炭治郎さんが、伊之助さんはピカピカのどんぐりが好きだって言っていた)

それを聞いてから、実は咲は任務の移動中にどんぐりを見つけると、ついピカピカのやつを探してしまっていた。

加えて、伊之助の「天ぷら」発言により天ぷら蕎麦を食べたりと、意外と伊之助から影響を色々と受けているのだ。

咲はここぞとばかりに、先日見つけたどんぐりをポケットから取り出した。

「あの、伊之助さん、いえ、親分っ!これ、お礼です!」

そう言って咲は、どんぐりを伊之助に差し出した。

どんぐりをつまみ上げて、伊之助が興奮したように大きな声を上げる。

「うおっ!!ピカピカどんぐりじゃねぇか!しかもデケェ!!」

伊之助はまるで小さな子どものように大喜びして、そこら中を飛び回り始めた。

(…なんだ。伊之助さんって怖い人かと思ってたけど、ただの可愛い人だったんだ)

ヒャッホーウ!と嬉しそうに叫んでいる伊之助の姿を見ながら、咲の心もホワホワと温かくなり、先ほど伊之助が飛ばした小さな光が自分の周りにも飛んでいるような気持ちになったのだった。

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