第2章 逢魔が時
「それでだな、胡蝶」
みんなが目を丸くしていることなど全く気にしていない様子で、杏寿郎が腕組みをしたまま話し始めた。
「はい、何でしょう」
杏寿郎同様に、現在の状況に全く驚いていない様子のしのぶが声掛けに応じる。
「咲の義足が折れてしまった。直るまで面倒を見てやってくれないか」
「えぇ、それはもちろん」
柔らかく微笑んで、しのぶが廊下の方に声をかけた。
「アオイ、入りなさい」
スッと廊下に続く襖が開かれ、しのぶの付けているものとよく似た蝶の髪飾りで髪をキッチリ二つに結い上げた少女が入ってきた。
「咲の義足を直してやってくれますか?」
「はい、しのぶ様」
少女は意志の強そうな眉をキリリと上げると、大きく頷いた。
彼女の名前は神崎アオイといい、鬼殺隊の隊士であるが戦いには赴かずもっぱらこの蝶屋敷で怪我をした隊士達の治療に当たってくれている。
看護の技術だけでなく炭治郎の背負箱を直してしまうなど、とても器用な一面も持っていて、同じく看護婦として働いている、なほ、きよ、すみ、という三人の少女たちからも大いに頼りにされているのだ。