第8章 あなたの笑顔が見たいから
甘露寺はその華奢な体躯に似合わずかなりの量を食べる。
なので、甘露寺の用意してくれたパンケーキは豪快なほど大きく、自宅で養蜂しているというハチミツもたっぷりかかっており、見るからに美味しそうだった。
「いただきまーす!」
二人で手を合わせてパンケーキを食べ始める。
甘露寺は一口一口が大きいのだが食べ方がとても綺麗で、その食べっぷりを見ているとむしろ清々しい気持ちすらしてくるのだった。
「美味しい!」
咲がニコニコと笑顔を浮かべながら食べるのを、甘露寺は笑顔で見つめている。
「はぁ~、咲ちゃん可愛いわ!私、キュンとしちゃう!きっとみんなもしてるわ」
「えっ、そ、そうですか?」
甘露寺の言葉に、咲はパンケーキを喉に詰まらせそうになりながら言う。
「そうよぉ!特に……」
師範が、と言いそうになって甘露寺は慌てて口を押さえた。
師範とは、煉獄杏寿郎のことだ。
甘露寺は一時期、杏寿郎の継子として鍛錬を受けていたことがあり、いまだに杏寿郎のことを師範と呼んでいる。
煉獄家に住み込みで修行をしていたので、咲ともひとつ屋根の下で過ごした期間があるのだ。
だからなのか、甘露寺は咲のことが本物の妹のように思えて仕方がない。
何をしていても可愛く見えてしまう。