第7章 不死川は…おはぎが好きなのか…
一方の杏寿郎と不死川は、お互いを牽制しつつも前に進もうとするが、どちらも強敵でありなかなか席にたどり着くことができない。
ついには、ガッと両手を握り合い、ギギギギと力比べをするような格好となった。
そこで杏寿郎が、額に血管を浮かべながらもいつもの猫のような表情で話し始めた。
「不死川が、咲が魚の小骨を飲み込まないか心配する気持ちはよく分かる。俺も同じ気持ちだ!そこでどうだろう、ここはひとつ、咲が注文するもので席を決めないか!魚料理を頼んだら君が、肉料理を頼んだら俺が、咲の正面に座るというのは」
「あァ、いいぜェ」
杏寿郎の提案に、不死川も目を血走らせながら頷く。
そういう訳で、二人は咲が注文するのを待つことにしたのだった。
自分の知らないところでまさかこんな話になっていようとは思いもしない咲は、しのぶと甘露寺の間に座って、キャッキャと楽しく過ごしていた。
鬼殺隊のほとんどは男性隊士であり、女性隊士もいない訳ではないがとても数が少ない。
それは隠も同じことで、だから男性ばかりに囲まれて普段は仕事をしているので、たまにこうやって女性隊士と話せるというのはとても楽しいことだった。
「ここのお店はね~、何を頼んでも本当に美味しいのよ!」
「えー!何頼もうか悩みますねー!」
「たくさん食べなさい。咲は育ち盛りなんですから」
若い女性が三人並んで座って和気あいあいとしている光景は、傍から見ていてとても微笑ましいものだ。
目は見えないが、その雰囲気を話し声と肌で感じ取っている悲鳴嶼は、嬉しそうに南無南無と言っている。