第7章 不死川は…おはぎが好きなのか…
「しのぶさん!」
男達の腕の隙間からしのぶの姿を見つけた咲が、嬉しそうな声を上げる。
ターッと咲はしのぶに向かって走って行ってしまい、空っぽになった腕の中を見て杏寿郎と不死川、宇髄はしょんぼりした。
「よしよし咲、今日もちゃんと藤の花の香水を付けていますね。先ほどのおはぎ、とても美味しかったですよ」
駆け寄ってきた咲の頭を、しのぶは優しく撫でた。
それから義勇に向かってもニコッと微笑みかける。
「冨岡さんも、ありがとうございました」
その先には、団子状態になっている杏寿郎達の横で、ポツンとつっ立っている義勇の姿。
彼は、杏寿郎達にもみくちゃにされている咲を助け出そうと、横でアワアワしていたのだ。
しのぶにそう言われた義勇は、少しの沈黙の後、ボソリと言った。
「……大したことではない」
そんな素っ気ない返事をするものだから、しのぶはニコニコとした表情は崩さないまま、「あらあら」と若干呆れたような声を出す。
成人男性なのだから、もう少し気の利いた返事ができないものか、と思っている様子だった。
だが咲は、義勇の表情からはっきりと、「みんなに喜んでもらえて嬉しい」という気持ちを読んでいたので、やはりもどかしさで胸がいっぱいになるのだった。
(あぁ~…義勇さんがもう少し口下手じゃなかったら、その想いが皆さんに伝わるのに……)
咲がそんなことを考えていると、団子の中から抜け出してきた杏寿郎がしのぶに声をかけた。
「俺達はこれから飯を食いに行くのだが、良かったら胡蝶も一緒にどうだ?咲も行くぞ」
あ、いつの間にか私も行くことに決まってたんだ、と思いつつも、特に断る理由もなかったので咲は頷く。
「あら、そうなんですか?では私もご一緒させていただきます」
そういう訳で、そこそこの人数になりながら、一行は目的の定食屋を目指して歩き始めたのだった。