第7章 不死川は…おはぎが好きなのか…
産屋敷邸の外門まで行ったところで、人が立っているのが見えた。
「あれっ、義勇さん、どうされたのですか?」
ポツンと、一人で門前に立っている義勇のもとに咲は駆け寄っていく。
咲が耀哉と面談していたのは半刻(一時間)ほどであったが、その間ずっとここにいたのだろうか。
「お前を待っていた」
いつも通りの、ぼーっとした表情をしていた義勇は、駆け寄ってきた咲を見るとそう言った。
それからやや表情を改めて、
「今日はありがとう。不死川におはぎを食べてもらえて良かった。咲のおかげだ」
と、僅かに微笑みながら言ったのだった。
その柔らかい表情を見て、咲は嬉しくなる。
「いいえ!いいえ!義勇さんが一生懸命作ったからですよ!また一緒に作りましょうね!」
「うん」
少しだけ得意げな顔をしてコックリと子どものように頷く義勇に、咲もニコニコと笑顔を浮かべたのだった。
「義勇さん、まさかこれを言うために待っていてくださったんですか?」
「そうだ」
キョトンとして、さも当然だと言わんばかりの義勇の表情に、咲はつい心の中で笑ってしまう。
(可愛いなぁ……。この方の可愛さが伝われば、もっと皆さんとの距離が縮まるのにな)