第7章 不死川は…おはぎが好きなのか…
そして、「咲も一緒に作った」という言葉に、過剰に反応した人物がもう一人いた。
「何っ!それは楽しみだ!!早く食べようではないか!!」
言うまでもなく、それは杏寿郎だった。
杏寿郎はニコニコと笑って咲の肩を優しく抱くと、ひなき と にちか が用意してくれた座敷の方に向かって歩き始めた。
この間相撲観戦をした時のような、流れるようなその動作に咲は思わず頬を染める。
「咲は俺の隣に座って食べるといい!」
ニコッと太陽のような笑顔で見下ろしてくる杏寿郎に、咲はさすがにハッとして顔を振った。
「いっ、いいえ、私は……!皆さんに混じって食べるだなんて、恐れ多いです!」
隠である自分が、鬼殺隊最高位の柱達や、「お館様」と呼ばれ隊士達からの尊敬の念を一身に浴びている耀哉と席を共にするなど、分不相応であると思ったのだ。
とてもではないが、こんなそうそうたるメンバーの中で食べることなどできない。
「むう、そのようなことを気にする者は一人もおらんぞ!」
「そうだぜェ。そんなこと気にする必要はねェ。そんで、咲は俺の隣に座れェ」
「咲は……おはぎを食べてくれないのか……?」
口々に言われ、ぐうっと咲も言葉に詰まる。
そう言ってもらえるのは大変ありがたいことなのだが、そうは言っても……と咲がなおも躊躇していると、柱合会議が休憩に入って一度退席していた耀哉がいつの間にか戻ってきていた。
「私も、咲と一緒におはぎを食べたいな」
穏やかな、心の奥底から安堵するような声で言われ、咲もついに陥落した。
お館様である耀哉からこう言われてしまっては、もうどうしようもない。
というか、これで本当に何も気にする必要が無くなったということになる。
結局咲の席は杏寿郎と不死川の間と決まり、咲は両側からあれやこれやと世話を焼かれながらおはぎを食べることとなったのだった。