第2章 逢魔が時
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「はい、手当て終了です」
しっとりとした小さな手が、包帯を巻いた咲の手を優しくポンと撫でた。
ここは蝶屋敷。
蟲柱である胡蝶しのぶの邸宅であると同時に、怪我をした隊士達の療養所になっている。
咲の手を優しく撫でたのは、蝶屋敷の当主である胡蝶しのぶだ。
「ありがとうございます、しのぶさん」
「お安い御用です。でも咲、かすり傷とはいえ十分に気をつけてくださいね?あなたは他の人とは違うのですから」
「はい」
コクンと咲が頷くと、「よろしい」としのぶはふんわり笑って、今度は咲の頭をポンポンと撫でたのだった。
「あ、あのー、ちょっといいですか?」
恐る恐る右手を上げて質問したのは善逸だ。
「はい、何でしょう?善逸くん」
「も、もしかして……っていうか、もしかしなくても、その子って……さっきの隠の子ですか?」
そう言って善逸は、しのぶの前にチョコンと座っている咲を指さした。
声の感じから言って、自分達とあまり年齢の変わらない女の子だろうと善逸は予想していた。
それは当たっていたのだが、顔の大部分を覆っていた布を取ってみると、その下には美少女と言っても良いような顔があったのだ。
伊之助とはまた系統が違う、凛としたクールビューティーといった感じだ。