第7章 不死川は…おはぎが好きなのか…
庭に面した長い廊下をギシギシと踏みながら、咲は義勇の部屋に向かう。
この屋敷にはもう何度も訪れたことがあるので、勝手知ったるといったところだ。
義勇は無愛想なところもあるが、基本的には誰に対しても優しい。
ただ表現方法が不器用すぎるので、その想いはほとんどの相手に伝わっていない。
咲は、義勇のそんなところが不憫であり、またたまらなく可愛いと感じてしまうのだった。
廊下の突き当たりの部屋が、義勇の私室になっている。
スラリと障子を開けると、中は整然と片付けられており、荷物もあまり無かった。
整頓された文机の上に届け物の小包を置いて、くるりと咲は振り返る。
すると、開けっ放しにしてあった障子の向こうに、いつの間にか義勇が立っていた。
「飯の準備ができたぞ」
「ありがとうございます」
二人で並んで廊下を歩き、居間へと向かう。
「良い匂いですね。今日は鮭大根ですか?」
「そうだ。俺は鮭大根が一等好きだ」
ムフフ、となぜか得意げな笑みを浮かべる義勇の横顔を見て、咲はホワホワする。
(あぁ、この顔を皆さんの前でも見せてくださったら、もっと理解してもらえるのになぁ)
そんなことを思いながら居間のふすまを開けると、部屋の中央に置かれたちゃぶ台の上には、美味しそうな料理が整然と並べられていたのだった。