第6章 はっけよいのこった
「いやぁ、実に良い相撲だった!!楽しかったな、咲!」
「はい、本当に!」
藤若龍の勝利で試合が終了し、大勢の観客達と一緒にゾロゾロと外へ出てきた二人は、興奮冷めやらぬ様子で笑顔を浮かべながら口々に言った。
「応援したらまた腹が減ってしまったな。む、あそこで焼き芋が売っている!」
「私が買って参ります」
「すまんな!では、これを使いなさい」
そう言って杏寿郎はポケットから財布を取り出し、そのまま咲に手渡そうとした。
だが、咲は首を振る。
「先ほどお相撲の観戦券や食べ物を買っていただいたので、ここは私に出させてください」
「む、そんなことを気にする必要はない!俺が誘ったのだし、食べ物もほとんど俺が食った」
「私が杏寿郎さんに買ってさしあげたいのです」
ニコッと咲が杏寿郎に笑いかけた。
その可愛らしい笑顔に、杏寿郎の心臓は破裂しそうになる。
「ん゛っ!!」
心臓が口からまろび出るかと思って、杏寿郎が慌てて口元を押さえている内に、咲は焼き芋屋に向かって走って行ってしまった。