第6章 はっけよいのこった
「君、すごく可愛いね。良かったら俺達の席で一緒に見ない?」
ニコニコとしているが、あまり良い感じのしない男達の笑顔に、咲は当てが外れてガックリした。
「いえ、私はここで見ます。どうぞ気になさらないでください」
スン、と顔から笑みを消して、咲は静かに断った。
ちなみにだが、咲は笑顔の時と真顔になった時の落差が激しい。
笑顔を浮かべている時は、14歳とは思えないような幼い顔になるのだが、真顔になるともともとの整った顔立ちのせいもあって、凛々しくすら見えるようになるのだ。
そして咲は、軟派な男が好きではなかった。
初対面であるにも関わらずこの馴れ馴れしさは、不躾であるとすら感じるからだ。
だから、常にはあまり見せないような冷たい態度でもってそれを示した。
仮に相手が手を上げてきたとしても、咲には十分に対処できる自信があった。
鬼殺の剣士として鬼を相手にできるレベルには達しなかったが、一般人の二人や三人くらいなら負けないだけの実力は持っている。
だが、騒ぎを起こして注目を集めてしまうのは得策ではない。だからこそ、冷静に断ったのだ。
しかし相手も簡単には引いてくれなかった。
というより、小柄で華奢な少女が相手だからと思って咲のことを舐めてかかっている様子であった。