第6章 はっけよいのこった
会場に到着すると、そこは人でごった返していて、その混雑ぶりは今まで歩いてきた道の比ではなかった。
なので当然、というかもはや訊ねることもなく杏寿郎は咲の肩を抱き続けたのだった。
手の平に感じる、華奢な肩。
そうは言っても、確かに筋肉もついていることは分かる。
隠としての任務に耐えるため、今も鍛錬を続けているのだろう。
だが、もともとが小柄な少女だ。
どんなに頑張っても、生まれついて体格に恵まれた者のようにはなれない。
そんな小さな体で必死に頑張っている。
その姿が健気で、また、笑うと年齢よりも幼く見える顔のせいで、余計に庇護欲を掻き立てられるのだ。
こうやって会って、触れてしまうと、別れ際が辛くて仕方がない。
柱として、師として、そして兄のような存在であることを自覚しているからこそ、そんな女々しさはおくびにも出さないようにしているのだが……、だがやはり……この可愛らしい顔で笑顔を向けられると、離し難くなってしまう。
「あっ、杏寿郎さん!席はあそこみたいですよ!」
入場券に記された番号の書かれたマス席を指差して、無邪気な笑顔を浮かべた咲が見上げてくる。
「愛いっ!!」
思わず口に出ていたらしい。