第2章 逢魔が時
「隠の君も……」
無事か、と言いかけて、杏寿郎は目を見開いた。
「咲!!」
そう言うやいなや、杏寿郎は先程までの落ち着きぶりはどこに吹き飛んでしまったのか、慌てて咲と呼んだ隠の元へと駆け寄って行った。
「うずくまっていたから分からなかった!!一体どうしたんだ!?大丈夫か!?怪我をしているのか!?」
「杏寿郎さん、私は大丈夫です。助けてくださってありがとうございます」
あたふたと狼狽している杏寿郎に対して、顔のほとんどを黒い布で覆っている隠は、目元からわずかに覗く目元をほころばせて、安心したように言った。
「みなさんも、ありがとうございました。おかげで助かりました」
声の高さから推測して女性と思われるその隠は、炭治郎達にもそう言ってペコリと頭を下げた。
「いえ、ご無事でなによりです。それにしても、なぜあんな状況に?」
炭治郎は柔らかな笑顔を浮かべながら、そう訊ねた。
善逸と伊之助も隠の方を見ている。
「はい、実は義足が折れてしまいまして……。それで立ち往生しているところに、鬼が寄ってきてしまったのです」
そう言って彼女は、膝を折っていた右足を伸ばして見せた。
その膝の下には、脚絆でしっかりと固定された木の棒があり、それはちょうど真ん中あたりから真っ二つに折れてしまっていた。