第5章 俺達が一緒に
少しすると咲もやっと落ち着いてきて、炭治郎と禰豆子に挟まれ少し恥ずかしそうな顔をして縁側に腰を下ろした。
今日は泣いているところをたくさん見られてしまったので、今更ながら恥ずかしくなったのだ。
だが、炭治郎はニコニコとしてそんなことは全く気にしていない様子で、「今日は月が綺麗だなぁ」などと言いながら夜空を見上げていた。
つられて咲も夜空を見上げる。
(あぁ、本当に月が綺麗だ)
柔らかな明かりが胸にじんわりと染み込んでくるようで、咲の心を優しく包み込む。
(だけど…こんなに綺麗な月夜なのに……、きっとどこかで今もあの鬼は下卑た笑みを浮かべてるのだろう……)
森の暗闇の中に逃げ込んでいった甚振の後ろ姿を思い出すと、もどかしさや、自分の不甲斐なさなどが再び胸に沸き起こってきて、目の奥が熱くなる。
「咲からはさ」
ふいに炭治郎が言って、咲はハッとする。
「いつも何か、自分を責めているような匂いがするんだ」
間違ってたらごめん、と炭治郎は付け加える。
「それって、あの鬼のせい……?」
炭治郎は、あの甚振という鬼が咲に浴びせかけた言葉の数々が耳にこびりついたように残っていた。
そして、その言葉を聞いた時の咲から感じた怒りと絶望、そして強い自責の匂いも。
杏寿郎としのぶから咲の過去の話を聞いていたので、炭治郎は咲の心を心配していたのだ。