第5章 俺達が一緒に
炭治郎からそう問われ、咲はわずかに動きを止めた後、こっくりと頷く。
「……あの鬼の言った通りなんです。私が稀血であったばかりに、あんな鬼を呼び寄せてしまった。私が稀血でさえなければ、家族はあんなことにならなかったかもしれないのに……」
「咲……」
ぎゅうっと、膝の上に置いた拳を握り締める咲の姿に、炭治郎の目に涙が浮かぶ。
「分かる……分かるよ、咲。俺も、家族が鬼に殺された時、俺が早く帰っていればみんなを助けられたかもしれないのにって思ったよ」
炭治郎は、過去、自分も苛まれたその感情のことを思った。
炭治郎の言葉を聞いて咲の目にもまた、涙が浮かぶ。
「……あの鬼は十二鬼月になっていた……。下弦の弐……。私の足を食ったから、あの鬼はあんなに強くなってしまったんです…。だから私は、何としてもアイツを殺さないといけない」
また強く香ってきた自責の匂いに、炭治郎は思わずぎゅっと咲の手を握った。
「それは違うぞ咲。咲がそんな風に気に病むことじゃない。悪いのはあの鬼なんだ」
杏寿郎にも同じことを言われたのを思い出して、咲はハッと顔を上げた。
すぐ横に、炭治郎の顔があった。
「さっきも言った通り、俺達が必ずその鬼を倒すよ。咲と一緒に戦うよ」
「炭治郎さん……」
「禰豆子だって、善逸だって、伊之助だってそうだ。それに、煉獄さんや不死川さんだって。俺達が一緒に、咲と戦うよ」
そう言ってニコッと炭治郎は笑った。
全てを包み込んでくれるようなその笑顔と、握られた手の温もりに、咲は言葉にならないほどの感情が湧き上がってきて、ボロボロと涙を落としながら何度も何度も頷いたのだった。