第5章 俺達が一緒に
うっ、うっ、と嗚咽を漏らしながら咲は顔を伏せている。
小さな体が哀れなほどに震えていて、その姿を目の当たりにした炭治郎達は甚振への怒りが爆発した。
先ほどの、あの人をくったようなふざけた態度、残虐な手口を思い出すと、メラメラと胸が燃えてくるようだった。
「俺達が、絶対にあの下弦の鬼を倒すよ!!」
炭治郎の叫びに共鳴するようにして、善逸も声を上げる。
「こんなに可愛い女の子を泣かせるなんて、絶対に許さない!!」
そして伊之助も、
「この伊之助さまに任せておけ!!」
と叫んだ。
「みんな……」
涙でぐちゃぐちゃになった顔で、咲は炭治郎達の顔を見上げる。
伊之助は被り物のせいで分からなかったが、炭治郎と善逸の目にも涙が浮かんでいるのが見えた。
その時、ぽふ、と頭に手が置かれるのを感じて咲が横を見ると、心配そうに眉を下げた禰豆子が「むー、むー」と言いながら頭を撫でてくれていた。
その優しい手つきに咲は母親やしのぶの手を思い出し、また両目に盛り上がってきた涙を隠すようにして両手で顔を覆うと、再び肩を震わせて泣き始めたのだった。
そんな咲のもとに、悲鳴嶼が静かに歩み寄ってくる。
「困難にも負けずに進もうとする君の姿、きっと多くの者の勇気になるだろう。その悲願は、いつかかならず成就する」
「岩柱様……」
咲が顔を上げると、目の前に悲鳴嶼の顔があった。
その頬には細く涙の筋が流れていて、扇のように大きな手が、意外な程の優しさで咲の肩にそっと置かれた。
「さぁ、子ども達、今は一刻も早くあの人達のことを救ってやろう」
「…っ、はいっ!!」
悲鳴嶼の呼びかけにより、咲達は涙を拭い、一斉に動き始めたのだった。