第5章 俺達が一緒に
まるで吠えるように怒鳴られて、咲の肩はビクリと跳ねる。
「伊之助っ!!」
やや足を引きずりながらも駆け寄ってきた炭治郎が叱責するように声をあげる。
咲のすぐ横にいた善逸も、眉を寄せた。
「お前そんな言い方っ……」
だがそれとほぼ同時に咲は顔を上げると、涙で潤んだ瞳でキッと伊之助を見つめ返した。
蝶屋敷において「お前は山では生きていけねぇ」と言われた時はぐっと悔しさを我慢した咲だったが、今度ばかりはどうしても我慢できなかったのだ。
咲は感情を爆発させるようにして怒鳴っていた。
「私だって……っ、本当は剣士になりたかったっ!!でも…、鍛錬してもどうしてもなれなかったっ!!」
そう言って咲は勢いよく右足の脚絆を解くと、引きむしるようにして義足を外す。
あらわになる白い右足。
その膝の下には、あるはずのふくらはぎも足首も、何も無かった。
義足を年中付けているせいで赤くなった切断面はボコボコと歪に波打ち、明らかに齧り取られたのだということが一目見て分かる痛々しさであった。
「……!!!」
それを見た、炭治郎、伊之助、善逸の三人は言葉を失う。
咲は涙が止めどなく溢れる目をギュッとつむり、眉を寄せた。
「それでも私は戦いたかった……。剣士にはなれなかったけど、隠だって鬼を倒すのに何か役に立てることがあるかもしれないと思ったから…この道を選んだ…!……でも、私は何も…何も出来なかった…!!悔しいよ……っ」
そう言いながら、ボロボロと大粒の涙がその白い頬を伝い落ちていった。