第5章 俺達が一緒に
「な……っ」
その片目にはしっかりと大きな文字で、”下弐”と刻み込まれていた。
「下弦の……弐……!?」
「お前の足を食ったおかげでなぁ、俺は大きな力を手に入れた。今は十二鬼月となり、あのお方から名前まで賜った!俺の名は”甚振(しんじん)”だ!!俺はなぁ、獲物を甚振(いたぶ)って遊ぶのが何よりも好きなんだよぉ!!」
そう叫ぶと、鬼は咲に向かって手をかざした。
鋭い爪の生えた指先がぐにゃりと曲がったかと思ったら、まるで触手のように伸びて咲へと襲いかかってきた。
「俺だって藤の花の臭いは嫌いだ。だがなぁ、こうやって離れていれば、お前の事を捕まえるくらいワケねぇのさ」
ギュルルルと迫ってくる、幾本もの指。
つ、つかまるっ……!!と咲の体が戦慄した時、何かが飛び出してきて目の前に立ちふさがるのが見えた。
「ムーッ!!」
「!!?」
それは、炭治郎の妹・禰豆子だった。
ギュルギュルと彼女の手足に鬼の指が巻き付いたが、グググと禰豆子の腕力により引っ張られ、拮抗状態となった。
「ね、禰豆子ちゃん!!」
咲は驚いて声を上げた。