第5章 俺達が一緒に
「ぜ、善逸さんっ」
吹き飛ばされた善逸をバッと咲は目で追ったが、その視線の間にぬううと鬼が顔を差し込んできた。
「やっぱりお前いい匂いだなぁ~。お前のその匂いのおかげで、俺はお前を見つけることができたんだ。お前が稀血で、俺を引き寄せたから。だから家族はみーんな殺された」
あざけるようにニタァと笑う鬼。
「お前のせいでみんな死んだんだ」
その言葉に、ヒュッと咲は心臓が止まるかと思うほどの怒りにかられた。
ブルブルと拳が震える。
「う、うあああぁぁ」
そう叫んで咲は、とっさに藤の花の香水が入った小瓶を鬼に投げつけていた。
だが、至近距離で投げたにも関わらず、あっけなくそれはかわされ鬼は飛び退いた。
「あぁ、それかぁ、臭いの原因は。さっきからお前のいい匂いにまじって嫌な臭いがすると思ってたんだ」
地面に転がった小瓶を、まるでゴミでも見るかのように見やって、鬼はペッと唾を吐いた。
「確かになぁ、下級の鬼ならばこの臭いだけでお前に近づくことはできないだろうよ。だがな俺は……」
そう言って鬼は、ニタニタと笑っていたせいで細められていた目を大きく見開く。