第5章 俺達が一緒に
顔面蒼白になった咲の様子に気付いた炭治郎が、かばうようにして咲の前に立つ。
「咲!?もしかしてあの鬼は……」
炭治郎達は、先日咲を蝶屋敷に運び込んだ際に、杏寿郎としのぶから咲の過去について話を聞いていた。
鬼に襲われて、家族を全員殺されてしまったという話。
そしてその鬼は運悪く取り逃がしてしまったと……。
「アイツが……!アイツが私の家族を……!!」
そして、私の足を……と、咲の全身が怒りでブルブルと震えだした。
「おいおい~、そんな怖い目で見るなよ~。あの時は取り逃がしちまったが、今度こそ全部食ってやるよ。そうすればまた家族と一緒にいられるさ。あの世で」
「黙れっっ!!」
鬼のふざけた言葉を、炭治郎が一喝した。
炭治郎の形相が変わり、勢いよく斬りかかっていく。
だが、それをいとも簡単にヒラリと鬼はかわし、目にも止まらぬ速さで炭治郎の体を蹴り飛ばした。
「炭治郎っ!!」
数メートル吹き飛ばされ、砂埃を上げて地面に落下した炭治郎のもとに、善逸が慌てて駆け寄る。
「猪突!猛進っ!!」
今度は伊之助が飛びかかっていったが、鬼はいとも容易く攻撃をいなすと、ニタニタと笑い続けた。
「ギイイイィ!!くそーっ、テメェちょこまかとぉ!!」
悔しそうに声をあげ、もう一度突進した伊之助の腹部に、鬼の拳がメリィッとくい込んだ。
「ガッ!!」
ドガッという音と共に、伊之助の体が木に叩きつけられる。
「弱い、弱いねぇ~」
そう言ったかと思ったら、ふっと鬼の姿が消えた。
次に現れた時、鬼は咲の目の前にいた。
振りかざされた爪がギラリと鈍く光る。
そのあまりの素早さに、咲は飛び退くことも出来なかった。
だが、その時目の前に稲妻のような閃光が走るのが見えた。
「咲ちゃんには、ゆ、指一本触れさせないっ!!」
刀で鬼の攻撃を受け止めていたのは、善逸だった。
だが、その彼もまたすぐに、炭治郎と伊之助と同様にいとも容易く吹き飛ばされてしまった。