第5章 俺達が一緒に
その時だった。
ブワッと禍々しい空気が辺りを包み込み、ねっとりと絡み付いてくるような声が聞こえてきたのは。
「おいおい、お前ら何してくれてんだぁ~?」
「!?誰だっ!!?」
声のした方向へ炭治郎が怒鳴ると、まるで影が実体を持ったかのようにして木の裏側からぬっ、と一匹の鬼が現れた。
「俺がせっかく集めた餌を無駄にするんじゃねぇよ」
そう言う割にはたいして怒ってもいなさそうな表情をして、鬼はニタニタと笑いながら炭治郎を見つめた。
その姿に、咲の足は凍りついたように止まる。
「あ……あの鬼は……」
あの鼻にかかったような話し方、ニタニタと嘲るように笑う顔。
忘れもしない。
4年前、咲達一家を襲った鬼だった。
「ん~?お前ら鬼狩りか?それにこの匂い……」
キョロキョロと鬼が辺りを見回し始め、そして咲の姿に焦点を合わせると、一瞬ポカンとした後、ニタァア~と気味の悪い笑みを浮かべた。
「おやぁ~?何だか嗅いだことのある匂いだと思ったら、お前、もしかしてあの時の稀血の子どもか~?随分と大きくなったなぁ、こりゃ食いでがありそうだ」
むき出しになった二本の牙を見て、咲の脳内で、あの夜のことがフラッシュバックする。
切り裂かれた家族達の体。
飛び散る鮮血。
「逃げろ」と叫ぶ母や兄達の悲痛な声……。