第4章 わっしょい
「さぁ、咲も!」
言え!とばかりに、頬いっぱいにさつまいもを頬張った杏寿郎が咲の顔をニコニコと見下ろしてくる。
子どものように無邪気なその顔に咲も思わず、
「わ、わっしょい」
と言った。
だが、それを聞いた杏寿郎達は首を振る。
「むう!咲、声が小さいぞ!もっとこう、腹から声を出すように!わっしょいっっ!!」
杏寿郎に言われて、咲はもう一度、今度は力を込めて叫んだ。
「わっしょいっ!」
「うむ!良いわっしょいだ!」
杏寿郎が満足そうに笑うのを見て、自分は一体何をやらされているのだろうかと思わないでもなかったが、褒められたこと自体は嬉しかったので咲は顔をほころばせたのだった。
その後も「わっしょい」の嵐が続き、怒涛のような焼き芋会はやっと終了したのだった。
後片付けをしている時に千寿郎が、
「僕が幼い頃に母上は亡くなられたのではっきりとは覚えていないのですが、これは母上も言っていたそうです。ですからウチではみんな言います。そう言いながら食べた方が、なぜか美味しく感じるのです」
とそっと教えてくれたのだった。
しきたりじゃなかったんだ、と思いつつも、煉獄家の優しい思い出に触れたような気がして、咲の心は温かくなるのだった。