第4章 わっしょい
そんな会話をしているうちに甘い匂いが漂い始め、千寿郎が呼びに行っていた槇寿郎が来たところで、みんなで一緒にさつまいもを頬張ったのだった。
絶妙な焼き加減でほくほくと甘いさつまいもに、咲が思わず笑顔を浮かべながら食べていると、突然大砲が鳴るように杏寿郎が声を上げた。
「わっしょい!わっしょい!」
「えっ!?」
そのあまりの声量に、咲はビクッとしてさつまいもを取り落としてしまいそうになる。
だが、息つく間もなく第二砲が発射された。
今度は槇寿郎が、妙にドスの効いた声を腹から搾り出すようにして叫んだのだ。
「わっしょいっ!!」
それに続いて千寿郎も、先の二人に比べたらやや控えめではあるが、
「わっしょい!」
と叫んだ。
「え……なん……」
一体何事かと咲は目を白黒させる。
何しろ、何の照れもなく、ましてやふざけている様子もなく、三人はただただ嬉しそうに「わっしょい」と叫んでいるのだ。
もしやこれは自分が知らないだけで、この辺りの地域に伝わるしきたりか何かなのだろうか、とすら思ったぐらいだ。