第4章 わっしょい
槇寿郎は、初対面でボロボロと子どものように泣いてしまったことを恥じているのか、咲が煉獄家に来てから数日間は、少し避けているようなそぶりが見られたが、日が経つにつれてその緊張のようなものも徐々に薄れていった様だった。
杏寿郎や千寿郎にそれとなく聞いた話によると、槇寿郎はかつて鬼殺隊において炎柱として活躍しており、歴代の煉獄家当主の中でも特に優れた才能の持ち主だったらしい。
だが、妻の瑠火が亡くなった後から、まるで人が変わったようになってしまい、口数も減り、身だしなみにも気を使わなくなりすっかりふさぎ込んでしまった。
そしてついには鬼殺隊も辞め、一日中部屋にこもって酒ばかり飲むようになってしまったという。
それまでは毎日つけてくれていた杏寿郎、千寿郎への稽古も無くなり、それどころか鍛錬を続ける二人のことを、
「そんなことをしても無駄だ!」
と怒鳴りつけることすらあったという。
その話を聞いた時咲は、そんな言葉を投げつけられた杏寿郎と千寿郎がどれほど悲しかったことだろうかと、胸が締め付けられるような思いがした。
だが杏寿郎はそれに対して、
「父上も、苦しんでおられるのだ」
と悲しそうに笑った。