第4章 わっしょい
「ところで咲!」
洗い終わった咲の足を手ぬぐいで拭きながら、杏寿郎が下から見上げるようにしてニパッと笑う。
「ここは煉獄家なので、当然のことながら全員が”煉獄さん”だっ!!誰のことを呼んでいるのか分からない。だから今後俺達のことは名前で呼ぶといい!」
「あ、そうか!確かにそうですよね」
当たり前のことなのだが、言われてハッと咲は気がついた。
「うむ、ではまず俺の名前から呼んでみろ!」
ニコニコと、ものすごく期待されているような笑顔を向けられて、咲は少し照れくさくなりながらも小さな声で呼んだ。
「えっと……、き、杏寿郎さん……」
「んっ!!」
何だかもう、表現しようのないほど嬉しそうな顔をして、杏寿郎は咲の隣にドサッと腰を下ろすと、期待のこもった瞳でワクワクと見下ろしてきた。
「もう一度いいか!」
じいっと、燃える炎のような赤い瞳がまっすぐに見つめてくる。
「杏寿郎さん」
「うむ!愛いっ!」
「う……!?」
唐突に言われた言葉に咲は思わず頬を染めた。
そんな咲の頭を、杏寿郎はその大きな手でわしゃわしゃと撫で回しながら笑った。
そんなことをしている内に食事の用意が整ったと千寿郎が呼びに来て、暮れかかった夕日を見ながら杏寿郎は赤い顔をして、
「焼き芋はまた後日だな!」
と言ったのだった。