第4章 わっしょい
ぴーぴーと泣いている少女達の横に、霞みがかった表情を浮かべながら静かにカナヲが立っている。
彼女はあまり感情を表に出すことが無い。
だから今も、普段とあまり表情は変わらないように見えた。
だが、その頬には少し汗が伝っていて、よく見れば首にも手にも玉のような汗をびっしょりとかいていた。
それが暑さのせいではないということは、カナヲの様子を見ればすぐに分かった。
カナヲは感情を表に出すのがすごく苦手なのだ。
「カナヲちゃん、また来るからね。来たらまた一緒にお菓子食べようね」
そう言って自分よりも背の高い彼女に咲が抱きつくと、おずおずと伸びてきた手が、そっと咲の背に回されたのだった。
「咲、煉獄に変なことされたらいつでも俺に言うんだぞォ」
「むう、不死川!人聞きの悪いことを言わないでもらいたい!変なこととは一体何のことだ!」
「お前のそのテンションのことだろうがよォ。いいか、いきなり激しい修行をさせたりするんじゃねェぞ。咲はまだ義足の練習中なんだからよォ」
「無論、分かっている!俺に任せておけ!!」
その快活さが逆に不安を煽るんだよなぁ、と不死川以下のその場にいる全員が思ったのだが、当の杏寿郎にはマッチの先ほども伝わっていない様だった。
咲もほんのちょびっとだけ不安になったが、「きっと大丈夫」と自分に言い聞かせると、声を上げた。
「では、行ってまいります!」
大きく手を振って、蝶屋敷の面々と不死川に別れを告げる。
皆は咲と杏寿郎の姿が見えなくなるまで門の前に立って、手を振り続けてくれたのだった。