第4章 わっしょい
「……っ、胡蝶っ!」
杏寿郎が声を上げる。
正直なところ、選択肢を増やすような情報を与えて欲しくなかったのだろう。
それは咲の身を思うが故だ。
だが、しのぶにはしのぶの思いがあった。
自身も非常に小柄な体格に悩み、剣士としてやっていくのは難しいと言われた経験から、不利な条件を抱えながらも挑戦したいという咲の気持ちに胸を打たれたのだ。
三人がそれぞれに言ってくれた言葉の意味を、咲もよく理解していた。
杏寿郎の言う通り、この体ではもしかしたら剣士になることは叶わないのかもしれない。
だが、例えそうであっても隠として鬼殺に協力することはできる。
以前、隠の隊士は、剣技の才に恵まれなかった者がなることが多いと聞いたことがある。
鬼殺の剣士になれなくても、隠にだったらなれるかもしれない。
そうすればこの思いを胸に戦うことができるかもしれない。
そんな自分の想いを察して、しのぶは提案してくれたに違いないのだ。
「一生懸命努力します。どんなに辛い修行も諦めずに頑張ります。だから……だから、どうか挑戦させてください」
と、咲は腕組みをして眉根を寄せている杏寿郎の顔を見上げた。
その拍子に、目のふちに乗っていた涙がポロリと落ちた。