第4章 わっしょい
しばし流れる沈黙。
それを最初に破ったのは、杏寿郎だった。
「気持ちは分かるが、君のその体では剣士になることは難しいだろう」
「……っ」
初めて聞くような杏寿郎の厳しい口調に、咲は僅かに俯いた。
だが、それくらいで諦めるような覚悟では、この思いを口にしていない。
「挑戦してみなければ……結果がどうなるかは分かりません。それに、やりもしないで諦めたら、私は一生後悔すると思うんです……」
次々と鬼に殺されていった家族の姿……。
お前だけは逃げろと、盾になってくれた母や兄達の叫び声……。
それらを思い出したら、いつの間にか咲の両目からは涙が溢れていた。
声も立てずに静かに泣き出した咲に、不死川も口を開く。
「剣士への道は、お前が思っている以上に厳しいものだ。五体満足の奴だって、なれない奴の方が多い。お前が進もうとしているのは、そんな道だァ。それでもやるのか?」
何の躊躇もなくコクンと咲は頷いた。
その拍子に涙が頬からこぼれ落ち、咲の小さな手を濡らす。
「咲……、私はその挑戦にはあまり賛成できません。……ですが、それを止めることもしたくありません」
涙を流す咲の背中をそっとさすりながら、今度はしのぶが言う。
「もし、もしどうしても諦められないというのであれば、剣士の他に隠になるという道もあります」