第4章 わっしょい
「咲、義足で歩けるようになったらどこに行きたい?どこへでも連れて行ってやるぞ」
杏寿郎が、嬉しそうな笑顔を浮かべて訊ねてくる。
隣に座る不死川も同様の表情だ。
「やりたいこと、何でもさせてやるぜェ」
どういう訳なのか、この二人は咲に対して信じられないくらい優しい表情を見せてくれる。
咲の家族の仇を取り逃がしてしまった負い目からなのか、とも思われたがどうもそれは違う様だった。
それに、優しくしてくれるのはこの二人だけではない。
しのぶもまた、まるで本物の妹のように可愛がってくれるのだ。
その理由を咲ははかりかねていたのだが、三人の胸の内は、案外単純なものだった。
厳密にはそれぞれ胸に抱いた思いは違うのかもしれないが、咲の可愛いらしい見た目に心が和み、礼儀正しく素直な性格に好感を抱いていたからだ。
だから、まるで両手で包んで温めるようにして可愛がっている。
「私は……」
ニコニコと三人から見つめられる中、咲は少し返答に躊躇した。
実は咲には、少し前から、いや、杏寿郎と不死川から鬼を取り逃がしてしまったと聞いた時から胸に抱いていた思いがあったのだ。
「私は……鬼殺隊に入りたい。家族を殺した鬼を、この手で討ち取りたいです……」
咲のその言葉は、三人にとって全くの予想外のものだったらしい。
一瞬にして三人の表情は険しいものへと変わった。