第4章 ※たまにはシリアスに
【極上の味】
暗い部屋の中、ランプのほのかな明かりがクリスの寝顔を照らす。その寝顔を、ブランデーの入ったグラスを片手に優しく見つめるシリウスがいた。
「またやってるのか?変態」
刺々しい声がシリウスの耳に届く。それはこの家の同居人、ドラコ・マルフォイのものだった。
ドラコは腕組みをし、鋭い目でシリウスを睨んでいた。彼はクリスに思いを寄せている。しかしシリウスを睨んでいる目から汲み取れるのは一人の男としてよりも、彼女の保護者としての念が強かった。
「やあドラコ。なんなら一緒にどうだ?酒の楽しみ方を教えてやろう」
「結構だ。そんな安酒、僕の口に合わない」
「確かに酒は安物だが、肴は最高だ」
そう言って、シリウスはグラスに口をつける。と、同時にクリスの寝顔を見つめる。
クリスは容姿端麗でその寝顔すら美しかったが、そんなことよりもシリウスとしては安心しきっている彼女を見るのが愉しかった。
グリモールド・プレイスに居た時、悪夢にうなされ苦しむクリスを見る機会が多かった分、今のクリスを見るのは本当に感慨深い。
シリウスは少し腕を伸ばし、クリスの額にかかる黒髪をそっとなでた。
「……なあ」
不意にドラコが話しかけてきた。シリウスはクリスから目を離さずに応えた。
「何だ?」
「お前にとって、クリスって何だんだ?」
その声は先ほどの刺々しさはなく、17歳の少年が抱えている疑問そのものだった。シリウスはついクリスから目を離してドラコのほうを振り返った。
「前にも言っただろう、大切な存在だ」
「だから、何が、どう大切なんだ?」
「……難しい質問だな」
そう、とても難しい。正直言って自分がクリスに持っている感情は一言では言い切れない。ただ、しいて言うのならば――