第10章 ※まさかのエピローグ
スコーンの皿が空になり、紅茶が二杯目に入るころ、家の中には確かな温度が満ちていた。
「ところでさ、何でダンブルドアは『死の秘宝』を探させたんだろう?」
紅茶とスコーンで胃を満たし、満足げな顔をしたロンが突然そんなことを言いだした。
確かに、ハリーは7つ目の分霊箱になった所為で、一度は死ななければならない運命にあった。だが『死の秘宝』を3つ集めたからと言って、その力のお陰で生き返った訳ではない。
このまま謎は迷宮入りになる、と思ったその時、シリウスが優雅にティーカップをソーサーへ置いた。
「簡単さ」
柔らかな微笑みを浮かべて、彼は言う。
「誰だって、大切な存在に死んでほしくないだろう?」
「……」
「大人なら、誰もが願うことだ」
その言葉に、クリスは胸の奥がじんわりと温まるのを感じた。
ハリーも、ロンも、ハーマイオニーも、そしてドラコも同じだっただろう。どんなに子供っぽくても、やはりシリウスは大人だ。
「でも、もう現存してる秘宝は僕の透明マントだけだし」
「そうそう、これで一安心――」
「あまり楽観視していると、痛い目を見るわよ」
ロンの言葉を遮るように、ハーマイオニーがさらりと言った。
全員の視線が集まる中、彼女は涼しい顔で続けた。
「だって、最強の杖の主は――私だから」
「え……?」
一瞬、時が止まった。そして次の瞬間「ええええぇぇ!!?」とリビングが絶叫に包まれた。
ハーマイオニーは紅茶を一口飲むと、冷静に説明した。
まず、ダンブルドアに武装解除の呪文を食らわせたのがドラコで、そのドラコと模擬戦を何度も繰り返してきたヒロインとシリウス。この時点で持ち主は一時不明となる。
だがあの日の夜、シリウスに大けがをさせ、ヒロインとドラコを負かしたロンに主導権が移る。そして最後の最後にロンを倒したのは――そう、ハーマイオニーだった。
「……つまり」
「所有権は私にあるわ、今のところね」
彼女は何でもないことのように、紅茶を一口。
「あら、大丈夫よ。死の秘宝なんて不確かなものに興味はないから」
世界は救われた。けれど――この平穏も、案外油断ならないのかもしれない。
優雅に微笑むその姿を見て、残された面子は、そろって冷や汗をかくのだった。