第10章 ※まさかのエピローグ
「やあ、皆いらっしゃい。今お湯を沸かしてるからちょっとだけ待ってて」
リビングに入ると、スコーンの良い香りと共にハリーが顔を出した。彼の眼と同じエメラルドグリーンのエプロンをして、手にはミトンをつけている。
「ハリー!君がスコーンを焼いたって本当!?」
「うん、やってみたら意外と楽しくてね。まあ、形は不格好なんだけど」
「形なんて良いのよ、心がこもっていれば」
「ありがとう。とにかく座ってよ」
促されるまま、ロンとハーマイオニーが二人掛けのソファーに座る。その頃ようやく決着がついたのか、ドラコとシリウスもリビングに入ってきて、お互い一番離れた席に座った。
「客人を招いておいて、家に入れないだなんて……」
「いつもの事だろう?」
「いつも以上に陰険だ」
腕を組んで苛立つドラコを前に、ロンとハーマイオニーは顔を見合わせてくすくすと笑った。
“あの”マルフォイが自分たちと同じテーブルに着くなんて、ホグワーツに居たころは想像すらつかなかった。それなのに、今はこうして穏やかな時間の中で同じ空気を味わっている。それが可笑しくて仕方なかった。
「みんな、準備ができたよ!」
「うわぁ!すっごく良い匂い!!」
「ハリー!貴方お菓子作りの才能があるわよ!」
ほめ過ぎだよ、と言いながらも、ハリーはくすぐったそうに耳を赤くした。これで楽しいティータイムが始まる。――と思っていたら、またしても“始まった”。
「おい、僕のカップだけ欠けてるんだが?」
「お茶を入れてもらっただけありがたいと思え」
意地の悪い舅のようなやり口に、クリスは短くため息を吐いた。
「子どもなの?」
「子どもなんだ」
ハーマイオニーの言葉を、クリスは小さく頷いて肯定した。
緊張した空気を和ますように、ハリーはジャムやクリームの乗った皿と共に、お手製のスコーンを皆にふるまった。
「えっと、口に合えばいいんだけど……」
少し照れた笑顔で皿を差し出す。焼き色の整ったスコーンから、ほんのり甘い香りが広がった。するとロンが待ってましたと言わんばかりに頬張った。
「美味しい!!」
「本当だわ!」
「……本当だ、美味い」
ドラコも一拍遅れて口に運び、少しだけ黙ったあと小さくつぶやいた。思ってもみなかったドラコからの誉め言葉に、ハリーの耳が再び赤くなった。
