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【ハリポタ】シリドラ劇場

第8章 ※最初の夜


 僕は……僕は、死を覚悟してクリスと一緒にあの屋敷から逃げてきたはずだ。
 父上と母上が逃げた先で、どんな目にあうのかも覚悟してきた。僕の行動が、後のマルフォイ家にどんな影響を与えるかも覚悟してきた。
 なのに、なのに!!――『例のあの人』の名前1つ口にすることが出来ないなんてっっ!!!!

「ま、気に病むことはない、君の歳の少年なら当然のことだ。後は私達に任せて、君は父上と母上のもとへ帰りたまえ。クリスには私から上手く言っておく」

 何がきっかけだったか分からない。ただその瞬間、僕の中の何かが切れた。気が付くと、ブラックの持っていた酒を一気に煽っている自分が居た。
 のどが焼け付くような感覚が、血が頭の天辺まで上っていくような感覚が、僕を急き立てていた。
 僕は乱暴にグラスをテーブルに置いて、ブラックを睨み付けた。

「ぼ――僕は、僕はっ、ヴォルデモートからクリスを守る為に今、ここにいるんだ!お前の指図は受けない!!」
「へえ……クリスを守る為、か」
「いけないか!?」
「そうか。彼女が好きなのか?」
「…………んなっ!!?!?」

 突然主旨を変えたブラックの質問に、僕はさっき煽った酒が体の中をすさまじいスピードでぐるぐる巡っていく感覚がした。
 僕が答えに窮していると、ブラックが呆れたようにため息をついた。

「答えられないのか、まあ仕方がない。まだまだ子供だからな」
「すっ………………好きだとも」
「へぇ~、そうかそうか」
「くっ!!僕はもう寝るぞ!!!」
「ああ、お休み。ゆっくり寝るといい」

 慣れない酒も入っていた所為か、事の外すぐに寝てしまって、それから後のことはよく覚えていない。ただブラックが――シリウスが満足げに笑っていたのだけは覚えている。

「『ヴォルデモートからクリスを守る為に』か。中々言ってくれるじゃないか、まあ……ガキにしては上出来だな」
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