第5章 薔薇を塗ろう② トレイ・クローバー
「おい、お前、本当に大丈夫なのか?オレサマ、心配なんだゾ」
翌日、はグリムに扉の前で心配をされていた。
もうすっかり吐き気とかそんなものは感じなくなっている。
「大丈夫だよグリム。それに、グリムがいるから倒れても大丈夫!」
はグリムの頭をわしゃわしゃと撫でると、グリムは嬉しそうに笑って、喉を鳴らした。
「お前にはオレサマがいないとダメなんだゾ!ついてこい!」
グリムが勢いよく扉を開けると、目の前にトレイが片手に弁当箱を持って立っていた。
「トレイ先輩…!おはようございます」
トレイ先輩はニコリと微笑んで、おはよう、と返してくれる。
は胸が高鳴り、不思議と笑顔も綻ぶ。
「昨日、吐いたって聞いたけど…大丈夫か?」
「はい!もう大丈夫です」
「じゃあ、今日もこれ」
トレイは赤と白のチェックのナフキンで包んだお弁当箱をに渡す。
ずしりと重いお弁当箱を受け取り、ぎゅっとは抱きしめた。
「うふふっ、トレイ先輩のお弁当、ほんとに美味しくてこれ以外食べられなくなっちゃいそうですね」
目尻を下げては愛おしそうに笑う。
トレイは胸の奥に黒い炎が小さく燃え、ゾクリと悪寒が走った。