第1章 眠っている貴女を ジェイド・リーチ
「え?新作ですか?」
「はい、ぜひ試食して頂きたくて」
放課後、肩にグリムを乗せてオンボロ寮に帰ろうとしたらジェイド先輩に声をかけられた。
渡り廊下にとろけたオレンジ色の光が柔らかく差し込んでいる。
「わ〜!嬉しいです!」
「オレサマも行くんだゾ!」
肩に乗っていたグリムが嬉しそうな声を出して宙にふわふわと浮く。
「すいません、今、アズールが実験をしていて…動物の侵入が禁止されてまして」
ジェイド先輩は申し訳なさそうに眉尻を下げて、グリムにそう言った。
「ふなぁぁぁぁ?!オレサマ、腹減ってるんだゾ?!」
「こちらでどうですか?」
駄々をこねているグリムに、ジェイド先輩はブレザーを何やらごそごそ探って、手のひらにツナ缶をのせた。
「ツナ缶!!今日は許してやるんだゾ!」
グリムはツナ缶を口に咥えて早々にオンボロ寮へと帰っていってしまった。