第3章 真の主
「久し振りだな…元気でやっているか」
黒地に赤い雲模様の衣を纏った細身の男がシズクに近付く。すらりと伸びた背に丈の長い衣がよく映えた。
「…どうだ木ノ葉は?いい里だろう」
「はい…イタチ様」
木ノ葉隠れの里の抜け忍、うちはイタチに拾われてシズクは月隠れの里を出て木ノ葉にやって来た。イタチは、両親を亡くし生きる希望を無くしたシズクを救い、こうして仕事を与えてくれていた。
「今日はお前の顔を見に来た。お前はこのまま少しずつ、木ノ葉に馴染んでいけば良い」
「はい…ですが、一つだけ」
「何だ」
迷いながらもシズクは胸につっかえていた気掛かりな事を切り出した。
「……うちはサスケという者に会いました」
「…そうか」
「木ノ葉のうちは一族は皆、抹殺されたのでは…」
しばし沈黙が流れ、サワサワと風の音だけがそよいでいく。イタチは目を伏せて静かに口を開いた。
「…サスケは俺の弟だ」
「やっぱり…面影が、似ていると思って…」
「サスケの事はいい」
シズクの言葉を遮ってイタチは低く続ける。
「それより今後も九尾について調べておけ」
「…分かりました」
やはりサスケの事は言ってはいけなかったのだろうか?うちは抹殺の件に関してはあまり詳しく知らないが、実行犯であるイタチ本人には確かに聞きにくいし、おいそれと話してはくれないだろう。表情が厳しくなってしまった彼を見て、立ち入り過ぎたことを少し後悔する。
イタチはそのままシズクに背を向け歩き出した。
「イタチ様」
その背中にすがるように呼び掛ける。自分の主であり家族同様の彼に正直な気持ちを伝えたかった。
「今日はわざわざ来て頂いて…嬉しかったです」