第20章 仇討ち
「それは仇を取って欲しくてお前を生かした訳ではない。生きていて欲しいから助けたのだと、俺は思う」
お前の両親や仲間達は復讐など望んでいない、自分達の分まで生きて欲しいと願うはずだ、と諭されたのだ。
残された自分が何かしなければという強迫観念が膨らみ、父や母がどう思っているか考えたことはなかった。
両親のその気持ちは解る。だからこそ、どう生きるのかが大切なのではないか。迷ったり悩んだりを繰り返して、納得出来るか分からないけれど…
「木ノ葉に忍び込ませてたスパイはお前だろ?我愛羅って奴の容姿を教えろ」
「……我愛羅…一尾の人柱力の情報です…」
入手していた情報と、以前木ノ葉で見た彼の風貌を伝える。
「我愛羅は砂の入った瓢箪を背負っていて、その砂を扱い攻撃や防御を行います。現在は風影となっており、普段は里の中央にある塔内で過ごしているようです…」
その後一通りの情報交換と共有が済んで段取りが決まったようだ。立ち去る前にサソリがシズクを振り返った。
「…で、何が知りたい?」
話を聞いてくれるらしい。思い切って単刀直入に質問をぶつけた。
「月の里を襲ったのは、あなた…?」
「月の里?名前は忘れたが、まァ確かに昔小国のマイナーな里を潰したな」
サソリは地名こそ頓着がなさそうだったが、自分が仕掛けた事は覚えているらしかった。
「月夜に紛れては要人を殺す、暗殺を生業とする厄介な一族がいると言われてな」
少し間をおいて、思い出したようにすらすらと一族の特徴を喋り始める。誰かの依頼だったような口ぶりだ。
「お父さんもお母さんも…あなたに殺された…」
「お前…生き残りか?」
彼の仕業だと確信し無意識に小さく呟く。発せられた声は思ったより震えていた。そんなシズクの絶望した顔で彼は察しがついたようだ。
「せっかく生き残ったんならその命、大事にしたほうがいいんじゃねえか?それとも…」
含みのあるサソリの言い回しに辺りの空気がにわかに緊迫する。それには答えず静かに彼を睨み返した。
次の瞬間、一瞬で移動したシズクのクナイがサソリの腹部をかすめた。単純な動きだったのと殺意が漏れたことで避けられてしまった。
「…おい、イタチ、部下の教育どうなってんだ」