第15章 決別
唐突に出てきた言葉は、彼への素直な気持ちだった。脈絡のない話題を切り出すシズクの言動をサスケは訝しんでいる。
「何だよ急に…それは俺だって」
「サスケがあたしの名前を呼んでくれると、ドキドキするの」
体の向きを変えながらシズクはなおも続けた。
「…嬉しくて」
サスケの声が好き。
ぶっきらぼうな話し方も好き。
不器用な優しさも好き。
好きだから…
気付くと涙が頬をつたっていた。それを見てサスケが少し慌て始める。
「シズク…?一体どうした…」
堪えきれず涙が零れるのを隠すように、シズクは背を向けて走り出した。
「シズク!」
別れの時が近付いてきている予感に支配されていく。寂しさで潰れそうになる胸を押さえ、振り向かずに走った。
班別ミーティングを終えたシズクは一人自宅にいた。昨晩からずっと同じ事を考えている。このままイタチといるか、木ノ葉につくか、だ。
だがシズクにはどうしてもイタチを切り離すことが出来ない。当然だった。木ノ葉に滞在した時間と、イタチと共に過ごしてきた時間が違い過ぎる。
迷わずとも答えは出すことが出来た。出来ていないのは、優しく接してくれた木ノ葉の皆や楽しかった日々と決別する覚悟だった。
セツナ、ヒタキ…ごめんなさい…
行動は見張られている、迅速に動かなければ。イタチの命令を全うするため、ナルトをおびき出すのだ。
一楽にいたナルトを、隣町まで買い物に付き合えと無理矢理引っ張り出す。
「一人じゃ怖かったから…ごめんね」
「別にいいってばよ。でも、サスケの奴は?」
「カカシ先生と千鳥の調整やるみたい」
二人は宿場町として栄えている隣町までやって来た。
「心配いらないって、オレに任せろってばよ!」
暁はナルトをどうするつもりなのか。捕獲と言っていたが、用が済んだとしてタダで帰すだろうか。まさか…
恐ろしい疑問が浮かんできて、結構上機嫌で付き合ってくれたナルトのことが急に心配になる。