第14章 疑惑
「大蛇丸の部下でなく、木ノ葉に手を出していないなら、今回の件に関してはシロな筈だろ。このままじゃシズクが風邪ひいちまうよ…」
敵の体調を気にする甘い相方に、ヒタキは重たい溜め息をついた。
「お前な…風邪ひいてどうのなんてレベルじゃない。甘く言ったって後でシズクが苦しむだけだ」
「解ってる。でも…!」
セツナがシズクに好意を抱いているのは事実だ。いざこの状況に直面し、割り切れず迷いが出てしまっているのだろう。
「……あたしを救ってくれた人なの…」
シズクの震える声が沈黙を破った。主の名は出せないが、仲間であるこの二人にはせめて人となりは白状しようと思い至ったゆえの告白だった。
「身寄りのないあたしを拾って、色んな事を教えてくれて…優しくて……好きだった」
イタチのことを思い浮かべながら本心を偽りなく語るシズクを、二人は黙って見つめていた。
「…明日の火影様の葬儀、お前も参加しろ」
しばらくして、観念したような様子のヒタキの声が響いた。
「このままスパイ活動を続ければ、お前は確実に処断されるだろう。ただし、主を捨て木ノ葉側につくのなら前言撤回する…」
彼は静かに言い残し、相方をちらっと見やると先に踵を返していく。残されたセツナが複雑な表情で、再びシズクの肩に手を置きまっすぐ向き直った。
「お前がどうしたいのか…よく考えて、自分で決めろよ」
優しい口調で告げると、セツナは腕を離して歩き出した。冷え切った腕のはずなのに、離れた後もその感触はひどく温かく思えた。
.