第4章 復讐者
ごまかすような言葉を並べ、あくまでもクールを装う彼を微笑ましく思いながら、シズクは修業を始めるため森の奥へと歩みを進めた。
「…シズク」
ふいに呼び止められて振り向くと、サスケが視線を逸らしつつ遠慮がちに問い掛けてきた。
「お前…どうして里を出たんだ?何故木ノ葉に来た?」
唐突な質問に驚いて一瞬固まる。アカデミーではシズクの編入についてそこまでの説明はされていなかったらしい。こちらの返答がないため彼は少し慌てた様子を見せる。
「…いや、話したくないならいいんだ。悪かった」
「…両親が……他国の忍に殺されたの」
別に隠している訳ではない。木ノ葉には実際にこの身の上話を通している。サスケに聞かれるのは予想外だったがシズクは話し始めた。
「あたしのいた月隠れの里は小さくて無力だった。得体の知れない連中に攻め込まれて…里はあっけなく壊滅したわ。両親が死んで…あたし、ひとりになって…」
あの悪夢の光景を思い浮かべると勝手に声が震えてしまう。
「もっと強くなりたいと思った。あたしは家族を守れなかった…でも、もっと強くなって生き抜いてやろうって。いつか…里を潰した忍に復讐する為に……それで、大きくて豊かな国の里、木ノ葉にお願いしたの」
しばらくの間サスケは黙り込んでシズクの話に聞き入っていたが、ふいに静かに口を開いた。
「……俺も、お前と同じだ…」
「え?」
最初はその言葉の意味が分からずシズクは戸惑った。
「俺も復讐者だ。俺の家族、そして一族が殺された……ある男に」
徐々に彼の言わんとする事が呑み込めてきて、その事実に愕然とする。
「…俺はあの男を殺す!その為だけに…生きている」
あの男って、まさか……
シズクは体中が震えていくのを感じていた。考えてもみなかった、強烈な現実を目の前に突然叩き付けられた感覚。顔が青ざめていきそうなのを必死に隠し、やっとの思いで呟く。