第10章 君と見たい未来
丸がいなくなった部屋の中
ぼんやりとテレビを観ていると
丸を見送りに玄関に行っていた
ひなこが戻ってきて
後片付けを始める
後片付けなんか後にして
俺の機嫌を直してくれたらええのに…
なんてさらに拗ねてたら
手際よく後片付けを終えたひなこが
俺の隣に座り一緒にテレビを見始める
鈍感なやつめ!!!
なんて心のなかで悪態をつくと
聴こえてるはずもないのに
突然テレビのリモコンに手を伸ばし
ぷつりと電源を落とすと
「大倉さん…
もしかしてやきもち妬いてますか?」
なんてひなこは俺の顔を
不思議そうに覗き込んでくる…
そんな予想外のひなこの攻撃に
「そ…んなわけないやんか…?」
そう言って慌てて目を逸らすと
「ですよね…
でも私はちょっと寂しかったです。
ごはんもあんまり食べてなかったし…
大倉さんに触れられなかったんで…」
そう言うと手を伸ばし
ふわふわと俺の髪を優しく撫でて
嬉しそうに笑顔で俺を見つめてきて
ひなこな笑顔を前に
さっきまで不機嫌やった心臓が
慌てふためき始める…
あかん、あかん、あかん!!
何これ…?
俺の目の前で
俺を手のひらで転がしてんのは
誰や…?
何かうまく言い返したいのに
言葉が喉に詰まって
出てきてくれなくて
俺を見つめるひなこの笑顔に
身動きさえ取れない俺に
「大好きですよ…大倉さん笑」
そう笑顔で言うと
素早く背伸びをして
唇に一瞬触れるだけのキスをして
恥ずかしそうにまた
テレビのリモコンに手を伸ばし
スイッチをオンにする…
笑い声のするテレビに
真っ赤な顔を向けるひなこに
やっと動き始めた俺の頭と体は
ゆっくりとひなこの手から
リモコンを奪いもう一度スイッチを
オフにすると…
後は
ご想像にお任せするけど
俺の思考をあんなにも
可愛く停止させた責任を
しっかりがっつり
取ってもらったことは
言うまでも無いわ…笑